ダイエットしてみた

ダイエットしてみた。ざっとだけど、1ヶ月ぐらいで5キロほど痩せた。

とりあえずの目標にはなったから、リバウンドしないように注意しないといけないけど、思いの外に簡単に痩せたので、人は「僕がいかにしてダイエットに成功したか」という自慢話を我慢して聞かないといけない。

ただ、先に結論からいってしまうと、こうなる。「世の中には、ダイエットできる人間とできない人間がいる」と。身も蓋もない結論だけど、そうなんじゃないか。


ダイエットの前に、禁煙の話をしよう。僕は若い頃、けっこうなヘビースモーカーだった。当時、アスキーの編集あたりにいた人なら、カンピー(缶入りの両切りピース。50本入り)を持って編集部をふらふら歩いていた僕の姿を覚えてるに違いない。

それが、あるとき突然、禁煙した。いや、これは正確じゃないな。ただ単に「やめた」んだ。引っ越して、近くにタバコ屋がなくなったので、買いに行くのが面倒くさくなって気がつけばやめていた。それまで「タバコをやめるのがいかに大変か」という話ばかりを耳にしていたので、「面倒だからいいや」という程度のことでやめられてしまう自分がちょっと信じられなかった。ニコチン中毒ったって、イライラするだとか集中できないとかその程度で、別に幻覚が見えるわけでもない。我慢すればいいだけじゃないか。

それから、結婚してワインをやめた。千葉に引っ越していいワインが手に入りにくくなったこともあるけど、喘息を発症したこともやっぱり大きい。お酒は喘息に影響する。また大発作でも起こしたら命にかかわる、と医者に脅されればやめるしかない。――だけど、このときも「ああ、つらい」と思った記憶が無い。「じゃあ、やめるか」と思い、気がつけばやめていた。

お酒に関しては、完全に縁が切れたわけではなくて、時々、ノンアルコールビールを買ったり(←それはお酒じゃありません)、1~2ヶ月に1度ぐらいは欧米のビールを1,2本買って飲んだりする。だけど、「今回はこれでおしまい。明日からしばらくさよなら~」と思えばそのまま何も飲まずにいくらでも過ごせるようだ。

……で、ダイエットである。

事の起こりは、風呂あがりに何気なく体重計に乗って、64キロになってるのを知った時だ。なにしろ60キロを超えたのは2~3年ほど前で、この調子で増えてったらちょっとまずいぞ、とさすがに思ったのだね。

僕の中で、自分の体重の上限を「59キロ」と勝手に決めていて、それより5キロもオーバーしてしまった、ということもある。なんで読んだか忘れたが、「20歳の頃の体重より10キロ以上増えると成人病などの確率が高まる」というような記事をどこかで見たんだよね。で、その当時は49キロだったから59キロまではオッケー、と自分で勝手に決めてたのだ。それが気づけば5キロもオーバー。これはさすがにまずい。何とかしないといけない。

というわけで、「とりあえず59キロまで戻そう」ということで、ダイエットに踏み切ったのでした。

で、ダイエットの方法は? どうやって痩せたの? と興味津々で読んでいる人もいるかも知れない。が、おそらくご期待には添えそうにない。


ダイエットの方法は、「食べない」。 以上。


「それだけ?」とおもった人。そう、それだけ。もう少し具体的にいうと、まず朝食は必ず食べる。朝、食べないと代謝が落ち、同じ量を食べてもよりエネルギーを体に蓄えてしまうらしいので、朝食はかならず何かしら口に入れる。昼ごはんは、それまでの半分ぐらいにする。夕ごはんは、それまでの5~7割ぐらいにする。それを続けたら、1ヶ月で5キロ痩せた。

「嘘だ。そんなに簡単に痩せるはずない」と思うダイエット経験者もいるかも知れない。だけど、嘘ではない。別に運動もナントカいうサプリメントも青汁も黒酢も飲んだりしてない。ただ、食事量を従来の半分程度に減らしただけ。ただし、「それ以外には何も食べない」ということは注意した。おやつの時間に子どもや妻が「一緒に食べようよ~」と誘っても、夜、テレビを見ながらちょっと何かつまみたくなっても、すべて却下。3度の食事以外は一切食べない、というルールを作った。もちろんビールだのジュースだのコーラだのといったカロリーのある飲み物も一切ダメ。

まぁ、最初の2週間ぐらいで3~4キロ落ちたので、その後はたま~にお付き合いでちょこちょことおやつを食べたりはしたし、外食のときはどうしても一人前食べてしまったりするので完璧にこの通りにはいかなかったけど、それでもまぁだいたいはこの通りに生活したと思う。

世にダイエット法というのは山のようにあるわけで、書店に行けばダイエット本がヤギに食わせるほどあるのだけど、僕にはそれがよくわからない。人間、食べなければ必ず痩せるわけで、なんでダイエットにさまざまな方法があるのか意味がわからなかった。「何も食べなかったのに太った」という人は世の中にいないはず。(もちろん、身体的な理由で同じ量食べても太ってしまう体質の人がいることは知ってます。つまり、「消費するカロリーより摂取するカロリーのほうが少なければ、必ず痩せる」ということ)

ということは、結局、ダイエットに失敗する人というのは、「食べちゃってる」ということじゃないだろうか。食べなければ痩せることはわかってるのに、どこかで食べちゃってる。だから痩せない。で、痩せない理由を「食べちゃった自分」ではなく、「そのダイエット法が悪い」ということに求め、別のダイエット法を試す。そうした人が大勢いいるから、ダイエット本がこんなにたくさんあるんじゃないか。

「痩せることは痩せるけど、リバウンドが……」という声もよく耳にする。けど、痩せた後もそのまま食べなければいい話で、「痩せたから」といってまた食べれば太るに決まってる。ずっと食べなければいいだけでしょ?

禁煙も、ただ「タバコを吸わなければいい」だけなのに、吸ってしまって失敗する。禁酒も、ただ「酒を飲まなければいい」だけなのに、飲んでしまう。そうして失敗する。しなきゃいいだけなのに。不思議だ。

……そう思っていたのだけど、妻に「普通の人は、パパみたいに欲望をコントロールできない」というようなことをいわれ、そうか、それが理由なのか!ということに気がついた。

例えば、「これがどうしても欲しい!」といったものがあったとする。手元にお金がない。どうする? 今までの大きな買い物を思い出して欲しい(家とかになるとまた別次元だから、もう少し手頃なところでね)。十数万とか何十万とかいうものになると、おいそれとはおカネは出せない。「でも欲しい!」とローンを組んででも買ってしまう人は、多分、ダイエットできない人じゃあるまいか。

つまり、自分の欲求をコントロールできる人は、ダイエットだろうが禁煙だろうができるし、コントロール出来ない人は、ナントカダイエット法とやらを試そうがナントカエキスを飲もうができない、ということなんじゃないか。

そう考えてみると、僕の場合、「物が欲しい」という欲求にはしごく強いらしい。というより、世の中に「無理をしてでも手に入れたい!」と思うものなどない、と思ってたりする。欲求をコントロール出来ないほどに執着するのは、例えば「家族」のような、カネでは買えないものだけだ。カネで買えるものに「どうしても手に入れたい」ものなどない。だから「欲しい」と思う気持ちは、ほぼ完璧にコントロールできると自分で思ってる。

同様に、「お腹が空いた」という欲求も、必要ならいくらでもコントロールできると思う(餓死しない程度には、ね)。思えば若い頃、僕は山歩きが好きであちこち出かけていたのだけど、一人で出かけるときは荷物を減らすため、食料をギリギリまで切り詰めていた。カロリーメイト2箱とあめ玉で3日ぐらい山を歩いたりしてた。その頃に「空腹」のコントロール能力が鍛えられていたのかもしれない。(……それより前、猛烈なビンボー時代に、「カネがなければ、入るまで3日も4日も食べずに暮らす」という生活に慣れてた、という話もある)

下手なダイエット法を試すより、「自分の欲求をコントロールする」訓練をしたほうが、多分、ダイエットに成功する確率は高いと思う。世の中の「ダイエットしたいけどいつも失敗」という人。あなた自身の欲求をコントロールすることができてますか? ダイエット本を買い漁るより、精神的コントロール能力を鍛えましょう。そのほうが、単なるダイエットよりはるかに人生を豊かにしてくれると思うよ。

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