「ユーカリが丘」という街

……前回の投稿で、ちらっとだけ触れていたのだけど。

実をいえば、今回の転居に関して、一つだけ嘘をついていた(?)ことがある。僕が引っ越したのは「佐倉市」だ。これは嘘じゃない。その通り。

ただ、佐倉市の中のどこか?ということは、あえて今までぼかしていた。ぼちぼち、正直に告白しなければいけないだろう。

僕が越してきたのは、「ユーカリが丘」なのだ。

「歴史の街、佐倉」だの、「佐倉に引っ越して本当に良かった」だのといってるくせに、実は「ユーカリが丘」だぁ? どこが歴史の街だ? と突っ込まれるのはしょうがない。僕もそう思うから。

実をいえば、今回の家を見つけて購入を考えたとき、最後まで引っかかっていたのが、この「ユーカリが丘」という場所だった。だって、「ユーカリが丘」だぜぇ? こんなこっ恥ずかしい名前の街に、住みたいか?

また、ここは「山万」というデベロッパーが牛耳っている町だ、というのも引っかかっていた。ユーカリが丘は、村上龍のカンブリア宮殿で「奇跡の街」として取り上げられたためか、「山万というデベロッパーによって長期的な視点から開発が進められている、すばらしい街」のような印象があるかもしれないが、これは見ようによっては「何から何まで、山万という一企業に支配されている街」という見方もできる。正直、そんな街、息苦しくないか?という気もしていた。

が、案ずるより産むが易しだ。とにかく転居を決め、引っ越してきたのだけど、このユーカリが丘という街は存外、いい街であることがわかってきた。


その1:いいパン屋が多い
市原の何が嫌だったといって、「うまいパン屋がない」ことだった。これは、実は我が家にとってはとても重要な事なのだ。そのため、わざわざ千葉市までパンを買いに行ったりしていたくらいだからね。が、ユーカリが丘・志津の周辺にはうまいパン屋が何軒もある。これだけで、「いい街」決定だ。

パン屋に限らない。中華料理は、お手頃でうまい店があちこちにあるし、イタリアンもフレンチも、本格的なお店がそこいらにある。市原では、車で30分以内にいけるところで「まともなイタリアン・フレンチ」は数えるほどしかなかったことを考えれば、ここは天国だ。

もちろん、もっと都会にいけば、素敵なお店は山のようにあるだろう。だが、こんな田舎で、これだけいい店が揃っているというのはなかなかあるもんじゃない。「何もない田舎」に住んでいた身からすればそう思うのだ。

その2:町並みがきれい
市原の何が嫌だったといって、「町並みがきたない」ことだった。小汚い、バラック同然の古家があちこちにあり、住宅街に安っぽいアパートがあちこちにある。古い建物があることが問題なんじゃない。「小汚い」こと、そして「荒んでいる」ことが問題なのだ。かつては新築だった安っぽい建売は10年もすればたちまち時代遅れな安普請となり見るも無残なバラックに変わる。市原には、そうした短期間でスラム同然の佇まいとなる建物が無数にある。

ユーカリが丘は実にきれいな街だ。単に「新しい家が多い」わけではない。既に開発から40年近くたっているわけで、古い家ももちろんたくさんある。が、きれいにメンテナンスされていて、けっして汚くないのだ。また、スウェーデンハウスに代表されるような「高級住宅街でないと見ないような立派な家」がそこいら中に建っており、散歩しているだけで目の保養になる。山万が建築条件の一部に町並みの景観を守るという条項を入れており、高い塀などがなく、どの家も植栽などがきれいに作ってある。また安普請の建売と違い設計も施工もしっかりしているためか、年月を経ても安っぽくならない家が多い。

パチンコ屋は街に1軒だけあるが外観からはほとんどそうは見えず、また「チンジャラ」の音も外にもれないように配慮している。安普請のアパートもほとんどない。あらゆる点で街の景観を考えて建物が作られている。これは確かに、一つのデベロッパーが街を総合的に開発しているからこそ可能なのだろう。

その3:守られている安心感
山万という企業、おそらくはかなり誤解されているかもしれない。何しろ、町の大半を牛耳っているのだから。ビッグブラザーの小型版のようなイメージで考える人もユーカリが丘の周辺には多いのだろう。

が、山万のおかげで、安心して暮らせる街が維持されているのもまた確かだ。建築されるすべての家にはセキュリティのシステム設置が義務化されている(もちろん、加入するかどうかは自由)。駅前には民間交番があり、セキュリティ会社とNPOが協力して町中を常にパトロールしている。ユーカリが丘のすべての家には、定期的に山万の社員が訪問し、さまざまな意見や不満を聞いて回っている。東日本大震災の時には全社員総出ですべての家を戸別訪問して安否を確認したという。

一企業が街中を見張っている、と見る人もいるだろう。が、そも、これらのパトロールや巡回訪問はすべて無料で行われているのだ。当然だが、そのためには専用の部員を確保し、それらの人にも毎月給料を支払わねばならない。そうしたことを考えたなら、開発業者といえどもまったく割に合わない、持ち出しのサービスであることは誰にでもわかる。少なくとも直接的な利益目的でできるものではないだろう。

山万が本当に信頼できる企業かどうかはまだわからない。が、少なくとも山万によって安心して暮らせる環境が整えられているのは確かだ。とりあえず、子供が休日に友達と遊びに行くときでも、「ユーカリが丘の中なら安心」という気持ちになる。「何かあったら、山万に駆け込め。なんとかしてくれる」といってある(笑)。

その4:おそろしく、いい子たち
娘が通うのは、井野中学校という、どこにでもある公立の中学校だ。ところが、ここがとても普通の公立中学とは思えないところなのだ。生徒の学力レベルが周辺の学校より一段高い、ということだけでなく、異常なくらいに「いい子」が多いのだ。

娘のクラスや部活の友達の話を聞いていても、本当に素直で素朴でいい子ばかり。何かちょっとしたことでも、いいことをすればみんなが褒めてくれ、失敗すれば励ましてくれる。「成功すれば嫉妬され、失敗すればボロクソにけなされる」のが当たり前だった市原の中学とはえらい違いだ。また、市原では主流派だった「ヤンキー」の姿もほとんどなく、友達と撮ったプリクラなどを見ても、市原で普通に見られた「商売女かと思うほどケバい子」などもまったくいない。

娘の学校での話を聞くと、「ここはどこ? おとぎの国なの?」と思ってしまうことばかりだ。「今日は、教室にあるオルガンで○○ちゃんとショパンを連弾したの」なんて、思わずほっぺたをつねってしまうような生活を送ってるらしい。生徒のほとんどがユーカリが丘の住人であるためか、公立なのに私立中学同然のような生徒たちが集まっているのかもしれない。

その5:心のゆとり
この「よい子たち」は、子供だけでなく、そこに暮らす人々全体にいえることかも知れない。不思議な事に、ユーカリが丘の周辺では、車を運転中、道をゆずられることが多い。こっちも自然、道をゆずるようになる。

市原では、誰も彼もが「絶対に割りこませるものか」といわんばかりに運転していた。制限速度50キロの道を60キロで走っていると後ろから80キロ超で次々と車が追い越していく。少しでも車間距離を開ければ乱暴な運転で車が割り込んでくる。どの車もウィンカーなど出さずにがんがん突っ込んでくる。右折車線、左折車線なんて無意味でどこの車線からもいきなり曲がってくる。暴走族まがいの車やバイクなど珍しくもない。そして異常なほどに高い「バックがへこんだ」軽自動車の割合。

車ばかりではない。町中を行き交う人々そのものが違っている。てかてかになったジャージ姿で辺りを睥睨しながらうろつくような人間はここではまず見ない。代りに見るのは、上品なカップルや家族連れの姿だ。週末、市原のファミレスやフードコートはヤンキーの子どもとキレかけた母親でいっぱいになるが、ユーカリが丘のレストランは家族揃っての食事を楽しむ人々で賑わう。(うちの妻などは、「もしかして山万がお金払ってモデルを雇って歩かせてるんじゃないの?」などと勘ぐってる)

生活水準の違い? 金持ちが多い? そうかもしれないが、それだけだろうか。市原にだって金持ちはいるし、ユーカリが丘だって生活の苦しい人もいる。ただ、ここに暮らす人々には、なんというか「心のゆとり」があるように見えるのだ。何がそうさせるのかはわからないが。


はっきりいって、ここに引っ越してくる前までは、ユーカリが丘なんて街は「ケッ!」と思っていた。な~にこじゃれた名前つけてんだよオラオラ~、というけったくそ悪い街の印象しかなかった。が、実際に住んでみて、ほとんど180度、印象が変わってしまったのには驚いた。

なにより、ユーカリが丘は「佐倉市」の中にある。新しい街だが、歴史の街・佐倉の一部であることは確かなのだ。だから安心していおう。佐倉に引っ越して本当に良かった。

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