Androidは本当にiphoneに迫りつつあるのか?

AdMobによる、モバイルの普及状況に関するレポートがあちこちで取り上げられている。AdMobは、モバイル向けの広告事業を行っている会社だ。AdMobの提供する広告がどの国のどの端末でどれだけ表示されたか――という情報をもとに、モバイルの普及状況を割り出しているわけだ。

これによると、世界規模では、Android系が1270万なのに対し、iphoneは2930万、iOS系全体では4380万に達するという。――というと、「さすがiphone」と考えてしまうが、しかしこの数値は「異常にAndroidの数が多い」ように思える。Androidは、まともに製品が登場し始めてまだ1年とたたない。なおかつ、本格的に販売しているのは北米ぐらいだろう。それでこの数値というのは、ちょっと信じがたい。AdMobは、現在、Googleの傘下にあるわけで、かなり意図的な形でデータを出してきている可能性はある。

正直、Androidがそう簡単にiphoneに追いつけるわけがないのは、Android陣営もわかったことで、むしろ「本格的な販売開始から1年も立たずにこれだけの勢力になっている」と見るべきだろう。

では、将来、果たしてAndroidはiphoneを超えることができるのか。いや、シェアの上でAndroidがiphoneをいずれ追い抜くだろうことは既に誰もが認めているわけで、もともとシェアということにこだわっていないアップルからすれば、そんなことで勝ち負けをいわれるのは心外だろう。シェアというなら、Android全体ではなく、各社のシェアで考えるべきだ。そうなると、アンドロイド携帯のメーカーでアップル以上のシェアをとれそうなところは今のところまったく見当たらない。そういった意味では、Androidのメーカーが単独でアップルを超えることはまずないだろう。

問題は、影響力だ。たとえトータルのシェアとしてAndroid連合がiphoneを抜いたとしても、どんぐりの背比べ軍団とアップルでは世界への影響力はまるで違う。となれば、たとえAndroid全体でのシェアがiphoneを上回ったとしても、アップルは何ら痛痒は感じない。……はずだった。

だが、このAdMobのレポートを見ていて、「あれ? ひょっとしてアップルの世界における地位は、意外に磐石ではないのでは……」と感じる面があった。それは、「Android Devicces by Country」の項目をみた時だ。Android端末販売数の国別の統計だ。これによると、

シェア第2位 China。13%。

iphoneの世界における中国の販売数は2%。これに対し、Androidは販売数の13%が中国だ。なんと、米国の次に売れているのが中国なのだ。考えてみれば、中国はAndroidをベースにした独自OSも作成しており、今後、Android系が急速に普及することはまず間違いない。BRICs(ブラジル、ロシア、インド、チャイナ4ヶ国)で、アップルはあまり浸透していない。アップルの高価格路線は、新興国ではどうしても分が悪い。勢い、先進諸国中心の販売戦略とならざるを得ない。

Androidは、低価格路線が可能だ。AndroidのOSそのものも、高機能を追求する3.0とは別に、手頃なハードで動かせる2.2路線を並行してリリースしていくという。これは明らかに「新興国への廉価版の販売」を意識している。なにしろメーカー自体が中国だったりするのだから、これらの市場におけるAndroidの優位性はいうまでもないだろう。

僕らは、常に米国を見て暮らしている。特にIT関係においては、米国で認められることが世界に認められることだ、と思い込んでいる。だが米国は(先進性という点では確かにもっとも重要な国ではあるけれど)世界におけるもっとも重要な市場というわけではない。世界で一番重要な市場は、誰が考えてもこれからは「中国」だろう。

中国市場を制するOSが世界を制する。いずれ、そうなる。iphoneは、はたしてそのような時代となって以後も今のような影響力を保ち続けることができるだろうか?

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