Azure OpenAI vs. Google Vertex vs. Amazon Bedrock


生成AIを利用した開発は、この10月でかなり大きな変化があった。Microsoft、Googel、Amazonというクラウドの3大プラットフォームの生成AI基盤がほぼ出揃ったのだ。

Microsoft Azure OpenAI

Microsoftは、もっとも動きが早かった。OpenAIと提携し、AzureにOpenAIの専用サービスを開設。(現時点ではまだ招待制が続いてる?みたいだけど、ほぼ申請すれば普通に許可されるはず)

OpenAIは、現在、もっとも注目されている生成AIの開発元で、これをすぐさまAzureに取り入れたMicrosoftは、現時点で他よりかなり先を行ってる感がある。

Google Vertex AI

Googleのクラウド環境「Google Cloud」には、以前からVertex AIというAIサービスがあったのだけど、これが生成AIにも対応し、大幅に機能拡張されている。注目すべきは、Googleが開発する大規模言語モデル「PaLM 2」が標準なのはもちろんだが、それ以外にもMetaのLlama 2やStable Diffusion XLなどのオープンソース系の生成AIモデルも対応している点。また、それ以前からAIを手掛けていたGoogleらしく、生成AI以外の機械学習モデルも多数揃えている。

Amazon Bedrock

こいつが一番後から出てきた。Amazonが開発するTitanという大規模言語モデルは、まだプレビュー状態で一般ユーザーは使えない。ただし、ClaudeやJurassicといった生成AIモデルをサポートしていてすぐに使えるようになってる。それとAPI関係も、独自のライブラリでいくだけでなく、LangChainへの対応を最初から考えているところも注目。


この3つが、当面は生成AIを利用した開発を考える人にとってのもっとも大きな選択しとなると思う。

では、どれを選ぶべきか?

個人的に、今月マイナビからAzure OpenAIの入門書を出したので、これを激推ししたいところなんだけど……。現時点では、OpenAIを擁するAzureが一歩も二歩も先を行っているのは間違いない。だから、「とりあえずOpenAIを使いたいならAzureで」というのは真っ当な判断だと思う。もちろん、OpenAIのAPIを直接利用してもいいんだけど、Azureならユーザー認証からアプリのデプロイまで一通り機能が提供されているから、これだけですべて済む。

また、Azure OpenAIは、モデルを個別にデプロイして利用するため、自身が学習させた情報が自分のモデル以外に流出する危険がない。OpenAI APIだとダイレクトに生成AIモデルにアクセスするわけで、「本当に送信したプロンプト、勝手に使ってないだろうな?」という不安がイマイチ拭えなかったりする人も多いと思うけど、Azureなら少なくとも自分のモデル外には出ていかない。これはかなりの安心材料だと思う。

ただ……。
ねぇ、本当にOpenAIの天下って、この先も続くと思う?


生成AI関係のサービスは個人的に一通りチェックしているつもりなのだけど、現時点で「これは!」と思うのは、実はOpenAI(ChatGPT)ではなかったりする。現時点でのイチオシは「Claude(https://claude.ai/)」だ。これはすごい。このモデルが生成する応答の質はかなり高く、OpenAIなどより上を行っている。またOpenAIと違い、最近の情報もかなり対応できているし、情報の正確さも上だと思う。

(実はOpenAIが「すげえ!」と思うのは、言語ではなく画像生成だったりする。DALL-E 3は、これはすごい。場合によってはStable Diffusion XLを超えると思うこともある。これが言語生成と連携して動くのは確かに他には真似できないな)

そして、もう1つがGoogle。どうも生成AI花盛りになって「Googleってダメじゃん」みたいな雰囲気を感じ取ってる人も多い気がするのだけど、そうかぁ? AIにおけるGoogleの底力を舐めてはいかんと思うよ。これだけの短期間でBardをかなりのレベルまで練り上げているし、PaLM 2の後釜として開発しているやつはGPT-4を凌駕すると噂されてる。

それと、Bardを使ってみるとわかるけど、自身の位置情報を元に地域密着の情報も扱えるんだよね。「お昼にラーメン食べたいけど、いい店ない?」とかいった質問にもちゃんと答えられるBardは、ChatGPTより時にははるかに便利だ。Googleマップを持っているGoogleは、これからこうした位置情報をもとにした機能もどんどん取り入れてくるだろう。

それとVertexには標準でColab EnterpriseというGoogle Colaboratoryをベースにしたサービスが用意されてて、Llamaなどのサービスを使いたいと思ったら用意されているノートブックを開けば、その場でColabからコードを動かしモデルを操作できる。この環境は、一度使うともう手放せないほどに快適だ。なにしろ、ローカルに開発環境を一切用意することなく「これ使いたい!」と思ったら1分後にはコーディングできるんだから(しかもちゃんと動くサンプルまでついて!)。最高だろこれ?

また、Amazon Bedrockも、AWSの他のサービスと連携して使えることを考えたなら、侮れない。それに、個人的イチオシのClaudeが使えるのは、現時点でBedrockしかない。これは意外と化けるかも知れない。ただ、現時点ではまだ不確定要素が多すぎるな。

というわけで、生成AIの戦争は、「OpenAIの一人勝ち」には決してならないように思える。現時点ではOpenAI + Microsoftが少しリードしているだけだ。まだまだ目が話せないぞ。


(ちなみに、画像生成AIは、Stable Diffusion XLとDALL-E 3でほぼ決まりな気がする。この2つに匹敵するほどのモデルは他に見当たらないような……)


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