「癌です」「ガーン!」なんて時代じゃねーんだよバーカ

 入院してまずい食事に辟易している患者のイメージをAIに描いてもらった。

しばらくぶりの投稿なんだけど、秀和システムが倒産してからいろいろありまして。

まぁ、「夏の真っ盛りにエアコンが壊れた」とか、「修理してもまたすぐいかれて、結局、トータルで50万近くかかった」とか、「寒くなってエコキュートがおかしくなって夜、お湯が出なくなった」とか、ほんとに「今年で人生詰んでしまうのか」というぐらいいろいろあったのだけど。

その中でも、まぁ順位付けでは5番目ぐらいの出来事が「大腸がんになって手術したこと」だろう。

秀和が倒産した直後、血便が出て大腸にポリープができてるのがわかって、それを生検したら癌になってることがわかって、2週間入院して大腸を15センチぐらい切って、現在、抗がん剤治療中です――なんてことを書くと、あちこちから「大丈夫ですか? 大変なことになりましたね」的な対応をされてしまって困る。

いや、別にそんな大変なことでもないから。

大腸がんはステージIIIaで、まぁ削除したリンパに転移した細胞が1個見つかったけど、それぐらいなんでもう全部取ったから大丈夫でしょう。でもま、万が一どっかに残ってるといけないから、1番よわ~い抗がん剤でしらばく様子見てみましょっか。...というのが、担当医の説明。ま、そういうことならしばらくやりましょう、というので現在治療中ということ。

既に癌は「治療可能な病気」となっていて、ステージIVであちこちに転移していたりしたならまだしも、それ以前で転移が特に見られないなら普通に治療して寛解できる。むしろ、以前からかかってる喘息の方が、治療して寛解することもできず、一生付き合わなくてはいけない病気で、個人的にこっちのほうがよほど怖い(年取って病院まで歩けなくなくなって喘息の治療薬が買えなくなったりしたら、想像するだに恐ろしい「チアノーゼで窒息死」という事態になるわけで、なおせる癌よりよほど怖い)。

が、未だに「癌=死病」と思っている人がわんさかいるようで、それが困る。こっちはちょっと癌になっただけなのに、大仰に心配されると、「いえ、それほどでも」ともいえず、なんとも居心地の悪い気分になる。

お医者さんの方もそういう点では同じようで、患者に癌告知をするとき、未だにえらく慎重になってしまう、ということも聞いた。

「癌です」

「がーん!」

ってギャグみたいなことが未だによくあるらしい。こっちは「大腸癌ですね」ときいたところで、「ああそうですか」としか思わなかった。大腸がんは日本人で急速に増えつつある病気だし、よほど悪化してない限り治療法も確立している。「あー入院して手術か。秀和倒産して仕事なくなったのにやばいよなー。それに病院のメシ、まずいんだよなー、どうすっかな」ぐらいは考えたが、せいぜいそのぐらいだ(ちなみに、妻がこっそりと雪塩(チョーうまい塩)を密輸してくれたおかげでなんとか乗り切れた)。

日本は、本当に「医療知識のアップデート」が行われていない国だな、ということをつくづくと感じる。未だに癌は死病だし、小児喘息は親の責任だし、精神疾患は根性がないからだし、ワクチンは危険だ、と思い込んでいる人が大勢いる。情報のアップデートを行わず、そうした「古臭くてとうの昔に捨てられた誤った医療知識」を当たり前のように信じている人。

本当にもう、勘弁してほしい。癌になって、「大丈夫? 死んだりしないでよね」と思われるたびに「うっせーな、癌ぐらいで死なねーよバーカ」と内心毒づくことがどんだけ本人を疲弊させるか身にしみてわかった。

確かに、死病はある。現代医学でも治療できない病気はたくさんある。が、この20年ぐらいの間で、確実に「治せるようになった病気」もたくさんあるのだ。医療は確実に進化している。そこんところをもっと大勢に理解してほしい。

癌は、治る。よほどのことがない限り、治せる。

そのことを知ってほしい。無駄に絶望したり、無駄に不安を煽らないために。

(ということなんで、無駄にお見舞いメールなんか送ってくんなよ。頼むぜほんと)


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