ネット選挙は空振りのほうがいい


「ネット選挙は空振り」というHuffingtonPostの記事
http://www.huffingtonpost.jp/2013/07/29/google-net-bigdata_n_3674078.html


ネット選挙解禁!と騒いたけれど、結局、たいしてネットは活用されてなかった、といった分析が出ていた。なるほどなー、なんというか、予想通りというか、やっぱりねと思った人は多いんじゃないだろうか。

「空振り」とあるけれど、これ、果たしてどのぐらいの影響力があれば「空振りじゃなかった」といえるのだろう。ネット選挙解禁となったとき、まさか「誰もがネットにかじりついて候補者の情報を調べ、それを鵜呑みにして投票する」ような事態になると? そう思ってたんでしょうかね。まさかね。

では、ネット以外のものはどの程度「空振り」でなかったのか。例えば、ポスティング。ポストに入ってくる候補者のチラシ、ありますねぇ。あれを見て「よし、この人に投票するぞ!」と思った人、どのぐらいいると思う? 1%も果たしているんだろうか。あるいは電話攻勢というやつ。「○○をお願いします!」と電話をもらって、それで決めた!って人、いるんですかい? 私なんぞは、逆に「お前にだけは絶対投票しないぞ」と思ったりするけどな。


結局、ネットだろうがなんだろうが、「これをやれば有権者がみんなその情報に飛びついて投票してくれる」なんて魔法の杖はない、ということだろう。もし、そんなことを期待してネット選挙解禁と考えていたなら、そっちのほうがおかしい。

ではネット選挙は無意味なのか? 否。「選挙に興味のない人」を振り向かせる効果は皆無だが、しかし「選挙に積極的な人」が、自分から情報を得ようと思ったとき、ネット選挙解禁によって誰もが多くの情報にアクセスできるようになった、この効果は大きいはず。いちいち「政党支部か候補者の事務所に出向いて印刷物をもらってくる」なんてことしなくていいのだから。

ネット解禁により、「投票しよう」という意欲のある人はより効率的に情報を集めることができるようになった。これは確かだ。ただし、それは「投票意欲のない人」に何かの影響をあたえるようなものではなかった、ということだろう。そして、実際に投票をする人の中で、「意欲的に情報を収集し投票行動に出る」人の割合というのは、このレポートにあるように実はたいして高いものではなかった、ということだ。

投票しない人だけでなく、する人も、実は投票という行為にさして意欲的なわけではない。大半は所属組織の意向や政党のイメージ、あるいは単に「ポスターの見た目」などで投票している、というのが実情ではないか。どのような手段も、「意欲のない人」に何らかの影響をあたえることなどできない。ということをこのレポートは証明した、ということだろう。

そして、それは実は「よいこと」なのかも知れない。なぜなら、それは「今の世の中が、さして大きな問題を抱えていない」ということの裏返しなのではないか、と思うのだ。

大勢が投票所に押しかけて我勝ちに投票する、というのは、すなわち「今の世の中を何とかしなけば」という切迫した状況にあるわけで、多くの人が積極的に投票しないのは「それでもなんとかなる程度の問題しかない世の中」だと大勢が思っているからではないか。いろいろ問題はあるけど、まぁ今すぐ何とかしないと国が滅びるということでもなし、とりあえずてきとーでいいや、という思いがあるからではないか。

「非常に投票率の高い世の中」というのは、例えば独裁国家であるとか、国が動乱の中にあり、投票により国家の行方が決定されるような状況にあるとか、長い間政治に関われなかった国民が開放された直後だとか、そういった世の中じゃないだろうか。

この一票により、日本は他国と戦争に突入する。この一票により、誰もが招集され戦地に投入される。例えばそんな状況だったら、おそらくは誰もが血眼になって情報を収集し投票するだろう。あるいは、将来、国家財政が破綻しようというとき、この一票で明日からの暮らしが決まるようなことになれば、誰もが投票所にいくはずだ。

今の世の中に問題は山積している。誰もが「政治が悪い」と思い、「政治でこれを何とかしてくれ!」と思っている。けれど、そうは思っているけれど、実は「なんとかしてくれたらいいけど、まぁ今より悪くならなければ今のままでもいいや」と誰もが内心思っている。そうじゃないか? だから、別に投票なんてどーでもいい。船はじわりじわりと少しずつ沈みつつあるのだけど、まぁ本当に溺れそうになったらどうするか考えればいいや、今はてきとーにやっといてくれ、そう思っている。だから誰も投票所にはいかない。ネットも見ない。そういうことではないか。

そう思えるというのは、幸せなことだ。「まだ日本は大丈夫だろう」と思っている、ということなのだから。今すぐ直ちに何かをしないと沈没する、とは思ってないわけだから。今の政治家に任せておけば、まぁ今すぐ国が滅びるわけでもないだろう、そう思ってるわけだから。これは皮肉でもなんでもない。実際、日本という国は、世界を見渡せばまだしもマシなほうなのだ。政治なんてものに誰もが積極的に関わらなくてもとりあえずは大丈夫な国なのだ。だから投票率は伸びない。

政治に関心がない。それは、僕らが幸せな証拠だ。

いいじゃないかそれで。「若者の政治離れが……」なんていってる人たちよ。大丈夫、心配しなくとも、あと十数年もすれば、誰もが血走った目で投票所に押しかけるような世の中に、ちゃんとなってるから。



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