英国EU離脱バンザイ!

英国のEU離脱の失敗をAIに描かせてみた。

英国の国民投票で、EUからの離脱が決まった。ここ数日、報道関係はこれ一色になってる感じだ。

その多くは、離脱に関する悲観的な見方のようで、「離脱、よかった!」といってるのは世界中でトランプさんとジョンソンさんの2人だけ、みたいな状況になってる。

こういう、一方が圧倒的に支持されるような様子を見ると、ついその逆にはりたくなるのが天邪鬼の性分である。というわけで、「EU離脱はよかった!」とここでいってみたい。

いや、もちろん、伊達や酔狂でそんなことをいってるわけじゃない。経済的にはかなりな混乱が起こるとは思うのだけど、しかしそれを補って余りあるようなメリットもEU離脱にはあるんじゃないだろうか、と思うからだ。

それは、「国民投票の機運が衰退すること」だ。

以前から、国民による直接投票が果たしてよいものなのか、非常に疑問を抱いてきた。日本でも、地方自治体レベルではずいぶんと住民投票が増えてきた。そして、「政治家なんかにまかせておけない、住民が自ら決めるんだ、それがいいことなんだ」といった好意的な意見が主流となっているような気がする。

が、直接民主主義がまともに機能するのは、せいぜい古代ギリシャのアクロポリス程度の規模までじゃないだろうか。それ以上の大きな自治体や国家で、直接民主主義が有効であるとは、僕にはとても思えないのだ。

「人は、見たい現実しか見ない」

このブログの冒頭に掲載している、ガイウス・ユリウス・カエサルの言葉だ。人は、もろもろの意見に耳を傾けて物事を決めたりなんてしない。まず自分で勝手に結論を出し、それからその結論にあった意見に耳を傾けるのだ。

「それは、お前だけだろう。多くの人はちゃんと意見に耳を傾けて考える能力をもっているはずだ」

そう。多分そうかもしれない。そして、そう思うことがきっとすべての間違いの源なのだ。「人間は○○なはずだ」という希望的観測のもとに世の中の重要な事柄を決定してしまうことが。

人は、冷静に正しく物ごとを判断できるかもしれない。が、できないかも知れない。であるのに、「きっとできるはずだからみんなに重要な事柄を決めちゃおう」というのが果たして正しい判断なのか。

「だからといって、政治家が信頼できるのか? もっと悪い選択しかしないんじゃないか?」

そう、政治への不信は確かにある。政治家の質も、正直、昨今はだいぶ低下してきたな、なんて思うことも多々ある。ただ、それでも一般の平均的な能力よりははるかにマシじゃないだろうか。少なくとも、「こりゃダメだな」と思う人間は選挙で落とすことができる。そして、うまい汁ばかりすおうとしてた人間が落とされる現実を目の当たりにすれば、ちっとはまともに働こうと思うだろう。

国民は、落選させられない。「次の国民投票には、こいつは参加させないようにしよう」ということはできないのだ。どんなに「国の重要な事項を決めるにあたってその素養を著しく欠く人間」だと思える者でも、国民投票には参加できるのだ。

餅は餅屋。たとえ下手くそでも、時々自分でついた餅をちょろまかして食べてしまうことがあっても、シロウトがつくよりは本職がついたほうがいい餅はできる。

そして、もう一点。僕は、国民投票の「わかりやすさ」が、気に入らない。「YESか、NOか」というシンプルな問いこそが、国民投票というシステムの根源的な欠陥なのではないかと思えてならないのだ。

物ごとはわかりやすく。Simple is Best. 多くの人はそう信じてきた。けれど、この「わかりやすさ」こそがクセモノではないか。――世の中は、決してわかりやすくなんかない。複雑で冗長で無駄なものばかりが多量に寄せ集まっている。そんな世界に僕らは暮らしている。だからこそ、「全部すっきり省いて、YESかNOか」という問いは、人々の心に訴える。

だが、その問いには「世の中にあったはずの多量の複雑で冗長で無駄なもの」がすべて削ぎ落とされている。そして、実はその複雑で冗長で無駄なはずのものの中にこそ、僕らの人生においてもっとも重要な何かが含まれいるのではないか、と思うのだ。

世の中には、シンプルにわかりやすくしてはいけないことがある。複雑で冗長で無駄なまま受け入れなければいけないものもある。わかりやすくするために省略してはいけないことをすべて省略した「問い」が、果たして正しい答えを導けるのか。いや、そもそも「YES」と「NO」の中に正しい答えはあるのだろうか。

今回のEU離脱で、これから英国は大混乱の時代を迎えるだろう。そして、「安易な問いで安易に国民に判断させることがどれだけ大きな問題を引き起こすか」を世界中の人間が理解するだろう。それは多分、よいことなのだ。

英国は、自らを犠牲にしてそのことを僕らに教えてくれようとしている。そう思えるなら、今回の決断はあながち悪いことばかりでもあるまい。(←英国民を除く)

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