AIは何でも知っている(ふりはする)

 OpenAI関係でいろいろ調べたりしているんだけど、ふと「オレのことはどんだけ知ってるんだろうか」と思って聞いてみた。その結果がこれ。


誰だ、こいつ?

多分、パラレルワールドの何処かでこういう掌田津耶乃がいるのかもしれない。が、少なくともオレが今住んでいる世界には多分いないと思う。

ChatGPTを初めてとするAIチャットが「勝手に事実を捏造する」としてけっこうあちこちから指摘されているのだけど、これは「捏造」とは違うだろうう。ChatGPTに「事実をでっち上げる」意図はないからだ。こいつは、ただ与えられたデータを元に演算したらこういう結果になった、といっているだけだから。

以前、AIについての何かの記事で読んだのだけど、AIは考えたり判断したりするプログラムではない。これは「単語の計算機」なのだ、という指摘が合って、すとんと腹に落ちた気がした。そうなのだ。例えば「〇〇の✕✕は△△ですか」と尋ねると、「〇〇」「✕✕」「△△」といった単語とそのつながりを元に計算して得られた結果が表示される、そういうものなのだ、と考えれば得心がいく。

電卓があれば計算間違いをしないか? といえば、そうではない。電卓は、あらかじめプログラミングされた仕組みに沿って結果を出しているに過ぎない。その処理に間違いがあれば間違った答えを出すし、数字を打ち間違えれば結果も間違える。電卓があればあらゆる計算が正しく行えるわけではない。

「単語の計算機」であるAIは、文章(単語を組み合わせた入力)を送ると、それらを単語(トークン)に分解し、関連する無数のパラメータを元に結果を返す。その「入力」と「結果」の間に、「正しいかどうか」といった判断はない。ただ、渡された情報を元に演算した結果を返しているだけだ。電卓は、結果が正しいかどうかなんて知らない。ただ、自身に組み込まれている処理を実行して結果を返しているだけだ。「正しいかどうか」「よいかどうか」「問題があるかどうか」なんて考えないのだ。それを考えるのは人間しかいない。

ChatGPTが登場して多くの人が利用するようになって、次第にこれがどういうものかわかってきたのではないか。これは、AIではない。「人工知能」ではないのだ。高度な機械学習のシステムであり、それ以上でも以下でもない。現状の(自称)AIにできることは実はそれほど多くない。

これは、多分「検索の完成形」のようなものなのだ。「知能」よりも「検索」に遥かに近いシステムなんだ。

例えば、「英国の50代の女優でジェーン・オースティンのドラマに脇役でよく出ている人、名前何だっけ?」と思ったとしよう。これをGoogle検索で調べようとしたら猛烈に大変だ。作品名も女優の名前もわからないのではどうしようもない。だけどChatGPTなら、そのまま尋ねればいい。ちゃんと膨大なデータから対象となる人を探して5人ぐらいを答えてくれる。うろ覚えのことを、うろ覚えの情報だけで検索できる、これは猛烈に便利だ。「これこそが本当の検索なんだ」と思う。

ただし、データを元に演繹しているから、収集したデータに誤りがあれば間違った結果を返す。では、帰ってきた答えが正しいかどうかはどうやって確認すればいいのか。「ググればいい」のだ。このときこそ、実はGoogle検索が役に立つ。ChatGPTの答えをググって正しいかどうか、出典はどこなのかを調べて、それが本当に正しいものか確認すればいい。この部分は、人間がやるしかない。

(こうした使い方を考えた上で改良したのがBing Chatだと思う。Bing Chatは、答えとともに参照したWebサイトのURLも出力し、ワンクリックで出典元を確認できる。素晴らしい)

というわけで、掌田津耶乃は小説家でもエッセイストでもありません。野間文芸新人賞も取ってません。ChatGPTで調べた人、間違えないように。

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