「AIでプログラミング」は、おそらく現在、AIがらみで最も急速に進化している分野だろう。Github Copilotのような開発の支援ツールから、CursorのようなAIが標準化された開発ツール、そしてReplitのようにAIベースで開発する開発ツールとこの1年ほどでものすごい勢いで進化してきた。
だが、これらはもうすべていらない。進化の最終形ともいえるラスボスが登場したから。それが、4月8日にGoogleが発表した「Firebase Studio」だ。とにかくFirebase Studioにすぐさまアクセスして試してみてほしい。現在、既にプレビュー版が利用可能になっている。使い方は恐ろしく簡単だ。
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まず、「こんなアプリを作りたい」というプロンプトを書いて送信する。 |
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「こんな感じで作ってみるけどどう?」と実装する機能やスタイルガイドラインをいってくるので、修正があればプロンプトを送り、なければプロトタイプ作成を実行する。 |
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しばらく待ってるとアプリが作られ表示される。アプリのプレビュー(実際に動く!)とAIとやり取りするチャットが表示され、使いながら修正などあればAIに「ここをこうして」と要望を送ればその場でコードが修正されていく。 |
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これはコーディングモードの画面。途中でいつでもIDEに切り替え、コード編集できる。もちろん、AIベースの開発モードにもワンクリックで戻れる。両者を行き来しながら開発を進められる。 |
Project IDXからFirebase一族へ
これ、見て気がついた人もいるだろうけど、ベースとなるIDE部分は、前にブログで紹介したProject IDXだ。それにGeminiのアプリ生成ツールを合体させ、AIベースでWebアプリ開発がスムーズに行えるような環境を構築している。
何より重要なのは、これが「Firebaseの一部として提供される」という点だ。つまり、ただ「アプリのコードを生成して終わり」ではないのだ。作ったアプリはFirebaseのApp Hostingでホスティングしすぐさま公開できる。
またFirebaseにあるFirestoreデータベースからAuthenticationによるユーザー認証など、すべて標準で使える。使えるだけでなく、AIでコード生成する際にこれらを利用するコードも自動で生成してくれる。
こうしたAIベースで開発ツールは既にいくつもあるけど、なんだかんだいって「完全AI生成」にはならなかったりする。特に大きいのが、バックエンドとの連携部分だ。ベース部分を作ったら、「さて、どこにホスティングするかな」「そこのデータベースを利用するようにコードを修正するにはどうするんだっけ」と考えないといけない。デプロイするサービスによって使えるデータベース、接続方法は変わってくる。大抵はそこまで完全にAIで自動化できるわけではなくて、「デプロイしたらバックエンドとの接続が動かない」ということはしょっちゅうだ。結局、人間がコードを確認して正しく動いているように手直ししてやらないといけない。
Firebase Studioは、「バックエンドはFirebase」と固定することで「フロントエンドからバックエンドまですべてAIによる完全自動生成」を実現している。ただホスティングするだけで、Firebaseの機能でログインし、Firebaseのデータベースを利用して動くアプリをAIが勝手に作ってくれるのだ。
作成するアプリは、Next.jsがベースになっていて、SPAな感じのモダンアプリが標準で作られる。もちろん、基本的なUIのデザインなどもSailwind CSSベースできめ細かに調整されている。「もう手直しするとこなんてないじゃん」なクオリティで作ってくれる。またUIの編集モードも持っていて、マウスドラッグで画面表示を編集することまでできる。もう完璧すぎる。
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UIもマウス操作で簡単に編集できるのだ。スゲー! |
Gemini 2.5は末恐ろしいやつ
まぁ、まだプレビュー版ということであって、実際に試してみると何度やってもAIがバグの修正に失敗したり、ちょっとした修正で動いていたアプリが急に動かなくなったり、といったことはしょっちゅうだ。また作れるアプリはNext.jsオンリーなようで、それ以外のものは現状ではデフォルトのワークスペースを作って編集していくしかなさそう(AIが自動生成はしてくれない)ようだ。
ただ、現段階でも、こいつの恐ろしいほどのパワーは感じることができる。何より感じるのは、「Gemini 2.5のコード生成能力の高さ」だ。コードの生成は他社AIもいろいろとやってるが、Geminiのコード生成は抜きん出ている。そう感じる。確かにまだエラーを起こすことは多いけど、生成されるコードのクオリティは他のAIを凌駕しているように思える。
これが進化して、Next.js以外にもNode.js/ExpressやFlaskやRailsなどのアプリまで標準でAIが生成できるようになったら。コード生成の精度が更に向上して、ほぼ無修正で生成コードが動くようになったら。そうなったらもう無敵だ。Firebase Studioがあれば、もう他の開発ツールは全部いらない。そう思えてしまう。
Googleは既に儲かってる
なによりこいつがすごいのは、「既に収益化できている」という点だろう。他のスタートアップが四苦八苦して作ったAIベースの開発ツールは、「これ、いつになったら収益化できるんだ?」と思うことがよくある。確かに便利だが、これに毎月課金して使うかな? とか考えると「無料で使える範囲でいいや。有料でないと使えないなら今はまだいらないかな」となってしまう。
が、Firebase Studioは違う。こいつは、完全無料だ。そして、それでいながら収益化できている。作ったアプリはFirebaseのBlazeプラン(従量課金制)で公開され、リソースの使用料に応じて料金が計算される。つまり、アプリを作って公開した段階で、確実にGoogleにはお金が入るのだ。
そして、「こいつを使えば簡単にアプリを作って公開できる」と気がついてどんどんアプリを作るようになれば、Firebaseベース(ややこしい)の開発がスタンダードとなっていくかも知れない。未だAWSやAzureの後塵を拝しているGoogle Cloudの巻き返しも期待できるかも知れない。
こいつは、開発者にとっても、Googleにとっても完全にWin-Winな強力ツールなのだ。AIの競争は激化しているが、もう開発分野に関する限り、Googleに勝てるところはない。そう感じてしまう。
さて。
で、これだけアプリ開発が簡単で、なおかつ「コードなんて書くことない」時代になっちまったら、オレは一体、何の入門書を書けばいいんだ? Geminiに聞いてみるか……。
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