カンニングがそんなに悪いのか?

茂木健一郎氏が、Twitterで、例のカンニング事件について過激な発言をして物議を醸しているらしい。刑事告訴した大学、報道するメディアに対し、クズを連発。何がそこまで怒らせたのかわからないが、相当に怒っているらしい。

僕は、茂木氏と面識もないし、発言の真意もまったくわからないのだけど、ただ一連のカンニング事件の報道については、「???」と思っていた。一体、何をそんなにテレビや新聞といった巨大メディアが騒いでいるんだ?……という、その騒ぎの大げさ加減にちょっと引き気味だったのは確かだ。

だが、昨日までは「なんだろうねこの騒ぎは……」で済んでいたのだが、今日の朝日新聞を見て絶句してしまった。――追い詰めている。既に包囲網が狭められている。IPアドレスが割り出され、既にどこに住んでいる誰かわかっている。しかも夕刊では、その本人の詳細や、知人の証言までが一面に掲載されている。(その後の報道で、どうやら逮捕されたようだ。おいおい、本気か?)

なんなのだ、これは。まるで連続殺人犯か何かのような扱いではないか。彼が一体、何をしたんだ。ただの、カンニングだろ? それとも、誰か人でも殺したっていうのか?

どんな犯罪であれ、もちろん罪は罪だ。だが、それぞれの罪にはそれぞれに見合う量刑が決まっている。それを超えて、裁判所でもない人間たちがよってたかって罰を与えたら、それは既に「リンチ」だろう。ただのカンニングが、そこまで重大な罪なのか? ここまで、日本中が寄ってたかって本人をあぶり出し糾弾するほどの罪なのか?

「いや、これは日本の大学の信用の問題だ。誰もが不正などせず、自分の実力で試験に望む、不正はない、そう誰もが思っているからこそ入学試験という制度が機能しているのだ。こんな不正が行われて、しかも罰せられなかったら、入試制度の信用に関わる」という人。そりゃあね、ズルはよくない。カンニングはルール違反だ。そんなことはもちろんわかってる。だがね、「大学入試」というものを、僕らはどこか勘違いをして認識してはいないか?

大学への入学許可は、入学試験で高得点をとった者への「ご褒美」では断じてない。「カンニングをした者が受かったら、本来合格すべき人間が一人落ちることになる」だと? バカも休み休みいってほしい。大学入試とは、そんな「試験の1点の違いで合否を決めるもの」なのか? 日本の大学というのは、そこまでバカなのか?

大学に入学すべき人間の選択は、ただ「一回のテストで高得点をとった」というようなものではないはずだろう。その大学がどのような人材を求めているのか。その大学がその人間をとることで、その人の能力をどれだけ伸ばせるか。どういう人材を育てることが、その大学が最大限に社会に貢献することにつながるか。そうしたことを総合的に考えて決めるべきものではないのか?

大学とは、人材育成の場ではないのか。社会において、よりよい人材を育て世に送り出す、その責務を負っているのではなかったか。入試の点数は、あくまで「数多ある審査項目の一つ」に過ぎないはずだ。もちろん、だからといってズルが許されるわけではないが、それがすべてであるかのような一連の報道は一体なんなのだ。

今回の事件を見て、「これからの正義の話をしよう」で登場した議題を思い出す。米国の大学では、様々なマイノリティを一定割合で採用するルールがあるという。それにより、点数の高い白人が不合格となり、それより点数の低いマイノリティの人間が合格するのは正しいのか。――それは、正しいのだ。さまざまな人種が集まる環境の中で学ぶことで、学ぶ学生たちの視野は広がり、同じようなものばかりの状態よりも更に人間として、また学力の点でも高く成長することができる。それこそが、大学がなによりも考えなければならないことだ。だからこそ、一点の点数の違いなどより、幅広い人間を取ることが大切なのだ。

ネットを使った、このようなカンニングが発覚したのは初めてだという。大学もメディアも想像し得なかったようなことを初めて成し遂げたのなら、それだけで十分、大学に入れてやってしかるべきだろう、と思うのはおかしいんだろうか。そりゃあ悪いことには違いないが、まだ未成年だぜ? こんなことを実際にやってのける人間だ。本人も今回の件で十分反省しているだろう。大学でしっかり学ばせたら相当に面白い人間に育つと思わないか?


……そりゃあ、楽しいだろうよ。「悪い」とわかっている弱者を、みんなでよってたかって正義ヅラして追い詰め糾弾するのは。誰もが正義の味方の気分を味わって面白いんだろう。だが、もういい加減にしようじゃないか。彼は逮捕された。おそらくたいした罪でもないのだから、起訴にもならずすぐに釈放されるだろう。もともと立件するような大層な罪ではなかった、なおかつ初犯で未成年、情状酌量の余地はたっぷりとある。もともと、こんなに騒ぐような罪ではなかったのだ。

祭りは終わった。ぼちぼち後片付けに入ろうじゃないか。この、くだらない乱痴気騒ぎで、僕らはよってたかって前途ある若者を一人、潰そうとしたのだ。すべてのメディア、そのことをよく考えてほしい。何がほんとうに重要なことなのか、少しは考えて報道しろよったく。

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